大判例

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東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)247号 判決

事実及び理由

原告主張の審決の取消事由の有無について検討する。

1  原告主張の1の点について

当事者間に争いのない本願考案の要旨及び成立に争いのない甲第一号証、第二号証によると、本願考案は、原告が主張するとおり考案の要旨の前段に相当する瞬間ガス湯沸器を上位概念とし、(A)及び(B)を構成要件とするものであることが認められる。

他方、成立に争いのない甲第四号証によると、第一引用例に記載されている冷水加熱用瞬間ガス湯沸器にあつては、本願考案における前記(A)及び(B)の構成を欠いており、本願考案の吸熱筒(1)と副熱管(4)とにそれぞれ対応する予熱筒(1)と予熱管(3)との接触ないし位置関係は、おおむね本願考案の願書添付図面(別紙図面(一)に同じ。)の第四図に示された従来例に相当するものであることが認められる。そうすると、第一引用例のものにおける予熱筒(1)と予熱管(3)との接触ないし位置関係は、いわば線接触的であるのに対し、本願考案における吸熱筒(1)と副熱管(4)(4)′の接触ないし位置関係は、いわば面接触的であつて、接触する部分(接触面積)が大きいという構成上の相違があり、そのため本願考案は第一引用例のものに比較して熱伝導が良好であるという効果を奏するものであることが明らかである。

しかしながら、前掲甲第一号証、第二号証、第四号証を検討しても、第一引用例のものにおける予熱筒と予熱管、本願考案における吸熱筒と副熱管との各接触ないし位置関係については、前述の構成上の相違以外に差異が見当らない。(なお本願考案には、別に前記(B)の構成があるが、これは、原告主張の1の点と直接関連がない。)

そうしてみると、右の構成上の差異について、これを審決がいうように「吸熱筒ないし予熱筒と副熱管ないし予熱管の固着構造」と称するも、原告が主張するように「吸熱筒ないし予熱筒と副熱管ないし予熱管との間における接触状況」と称するも、所詮は単なる表現上の差異にすぎないものというべく、審決が右の相違点に着目して実質的判断を加えていることは明らかであるから、原告の主張するような相違点を看過したものとすることはできない。

したがつて、原告の1の主張は採用できない。

2  原告主張の2の点について

成立に争いのない甲第五号証によると、第二引用例のものは、電気冷蔵庫用蒸発器に係る考案であり、本願考案における瞬間ガス湯沸器とは異なるものであるが、第二引用例のものにおいてもまた、天井板(6)(本願考案の吸熱筒(1)に対応する)に、冷媒流通管(7)(本願考案の副熱管(4)(4′)に対応する)を嵌入するための彎曲した凹溝(8)を形設して両者の接触面積を増大させ、もつて両者間の熱伝導を良好にするとの点においては、本願考案と軌を一にするものであることが認められる。

もとより、第二引用例記載のものは、前記のとおり電気冷蔵庫用蒸発器に係る考案であるから、原告主張のように、冷媒流通管と天井板(蒸発器本体)との間の温度差は、摂氏数十度であるのに対し、本願考案の吸熱筒と副熱管との間の温度差は、摂氏数百度に達することが考えられる。

しかしながら、本件証拠を検討しても、右のように本願考案が第二引用例のものに比較して温度差が大であるからといつて、接触面積を拡大することにより熱伝導を良好にしようとする技術的着想ないし課題の解決が困難であることを窺うに足りる資料はない。

そうしてみると、右のような温度差について差異があるというだけで、第二引用例に記載の技術を本願考案の属する技術に転用することが不可能であるとすることはできない。

したがつて原告の2の主張も採用できない。

3  原告主張の3の点について

本願考案に関する前記(B)の構成要件に関連して、審決が、凹溝内に管状体を位置させて固定する場合に、本願考案のように抑え板を用いることは、設計変更の域を出ない旨判断したのは、本願考案において円弧状の凹溝(6)に副熱管(4)(4′)を嵌め込んでその数個所に円弧状膨出部(7)を有する抑え板(8)で固定することに、特段の考案力がないことを説示したものであつて、右凹溝に副熱管を嵌め込んで固定するのに、第二引用例に示された「切起片」による抱持手段を採用することが可能であることまでも判断したものでないことはその文言に照らして明らかである。したがつて、本願考案において、右の切起片による抱持手段を採用した場合の不都合な点を主張して、審決の右判断を論難するのは相当でない。

なお本願考案における円弧状膨出部(7)を有する抑え板(8)で副熱管(4)(4′)を吸熱筒(1)に固定することは、その技術内容に照らして、管状体の固定方法として極めて普通に用いられる技術手段であることが明らかであつて、乙第一号証ないし第三号証は、これを単に例示したに過ぎないものであるから、この点について原告が主張するような違法の点はない。

4  以上のとおりであるから、原告主張の審決取消事由は、すべて失当であり、審決には所論の違法はない。

よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。

〔編註〕本願考案の要旨は左のとおりである。

吸熱筒(1)の上部に設けた主熱交換部(2)における熱管(3)の給水側と出湯側に吸熱筒(1)の外周面に巻回した副熱管(4)(4′)をそれぞれ接続してガスバーナ(5)の火焔が吸熱筒内を通つて上部の主熱交換部(2)を加熱することによつて冷水を温水にする瞬間ガス湯沸器において、吸熱筒(1)の副熱管(4)(4′)と接する部分に副熱管の外径に略適合する円弧状の凹溝(6)を形成し、これに副熱管(4)(4′)を嵌め込んでその数個所を円弧状膨出部(7)を有する抑え板(8)の両端部を吸熱筒にスポツト熔接等により固着して保持したことを特徴とする瞬間ガス湯沸器用熱交換器。

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